海をふわふわ漂うクラゲは、見た目の涼しさとは裏腹に、不思議だらけの生き物です。
脳も心臓もないのに経験から学ぶ種がいれば、傷ついても幼い姿に戻ってやり直す種もいます。大量発生して発電所を止めてしまうこともあれば、傾きかけた水族館を救ったこともありました。
刺されたときの対処法も、じつは種類によって正解が変わります。そんなクラゲにまつわる雑学を15個ご紹介します。研究にもとづく項目には出典を添えています。
クラゲの体はふしぎだらけ
脳も心臓もない体で、クラゲはどうやって生きているのでしょうか。まずは体のつくりから見ていきます。
1. 脳も心臓もないクラゲ

クラゲの体には脳も心臓も骨もありません。全身に網の目のように広がった散在神経が、光や水の動きを受け取って体を動かしています。
口と肛門も同じ一つの穴です。食べ物をそこから取り込んで消化し、残りかすは入ってきた穴からそのまま外へ。司令塔がなくても、これで不自由なく暮らせています。
※散在神経(さんざいしんけい)は、体全体に網の目のように広がった神経のことです
2. 体の約95%は水でできている

クラゲの体は約95%が水分で、資料によっては95〜98%とされます。残りはわずかなタンパク質や塩分だけ。ほとんど海水そのもののような体で、海を漂っているのです。
砂浜に打ち上げられると水分が抜け、あとには薄い膜のような跡が残ります。中華料理で食べるクラゲは、この乾かした部分にあたります。
3. 脳がないのに学ぶクラゲ
脳を持たないクラゲでも経験から学べることが、2023年の実験でわかりました。ハコクラゲの一種をマングローブの根に見立てた縞模様の水槽に入れると、はじめは壁にぶつかってばかり。
ところが7分半ほどで壁との距離を約50%広げ、ぶつからない泳ぎ方を身につけたのです。神経細胞は千個ほどしかありません。
出典:コペンハーゲン大学・キール大学などの研究チーム(Current Biology・2023年)
4. クラゲはプランクトンの仲間

プランクトンとは大きさの区分ではなく、海流に逆らって泳げない生き物のこと。傘が2メートル近いエチゼンクラゲも、りっぱなプランクトンです。
泳ぎが下手なわけではありません。傘が元に戻るときの渦を再利用して進むため、移動にかかるエネルギーは他の動物より約48%低いという研究もあります。
出典:ウッズホール海洋生物学研究所などの研究チーム(PNAS・2013年)
5. クラゲとイソギンチャク

クラゲとイソギンチャク、そしてサンゴは、どれも刺胞動物という同じグループの仲間です。毒針入りの刺胞で獲物をしとめる点も共通しています。
おもしろいのは、イソギンチャクとサンゴには一生クラゲの姿になる時期がないこと。クラゲの子ども時代の姿のまま、岩の上で一生を終えるのです。
※刺胞(しほう)は、毒針を発射する小さなカプセルのことです
個性豊かなクラゲたち
ひとくちにクラゲといっても、暮らし方は種類ごとにまるで違います。ここでは変わり者を集めました。
6. 不老不死のベニクラゲ

ベニクラゲは傷を負ったり弱ったりすると、体を作り変えて幼いポリプの姿に戻ります。分化転換というしくみで、条件しだいで何度でもやり直せます。
飼育下では1個体が同じ年に4回若返った記録もあります。ただし天敵に食べられれば死ぬので、本当に不死というわけではありません。傘の直径は4.5mmほど。
※ポリプは、岩などにくっついて過ごすクラゲの子ども時代の姿です
出典:かずさDNA研究所・東京電機大学などの研究チーム(DNA Research・2022年)
7. 逆さに暮らすサカサクラゲ

サカサクラゲは傘を海底に向け、口の腕を上に広げて寝そべるように暮らしています。名前のとおり逆さまですが、これは太陽に体を向けるための姿勢。
体の中に褐虫藻という小さな藻を住まわせ、その光合成でできた栄養を分けてもらっているからです。とはいえプランクトンも食べますし、泳ごうと思えば泳げます。
※褐虫藻(かっちゅうそう)は、体の中にすみついて光合成をする小さな藻です
8. 巨大エチゼンクラゲの謎

エチゼンクラゲは傘の直径が最大2メートル、重さは150〜200キロにもなる大型種です。日本生まれではなく、中国大陸の沿岸で育ち、海流に乗って流れ着きます。
大発生すると網を破り、漁獲物を押しつぶすため漁業被害は深刻。ところが翌年には千分の一ほどに減ることもあり、増減の理由はよくわかっていません。
出典:水産庁の大型クラゲ被害防止対策資料
9. 淡水に生きるマミズクラゲ

マミズクラゲは池やダムなどの淡水で暮らす珍しいクラゲです。原産は中国の長江流域で、水草や動物にくっついて世界へ運ばれたと考えられています。
傘の直径は大きくても2.5センチほど。ふだんは水底でポリプとして過ごし、クラゲの姿で現れるのは夏から秋の短い間だけ。同じ池でも、出る年と出ない年に分かれます。
※海のクラゲとは別のグループ(ヒドロ虫のなかま)に属します
10. 光るクラゲとノーベル賞

下村脩さんはオワンクラゲが光るしくみを追ううちに、緑色蛍光タンパク質GFPを見つけました。採集のため1日3000匹すくう日々を重ねたといいます。
GFPは生きた細胞に光る目印をつける道具になり、がん細胞の増え方やiPS細胞の見分けに使われています。この功績で3名が2008年のノーベル化学賞を受賞しました。
出典:ノーベル財団(2008年ノーベル化学賞)
人とクラゲの意外な接点
クラゲは眺めるだけの存在ではありません。刺されたり、発電を止められたり、食べたりと、人との接点は思いのほか多いのです。
11. 日本でいちばん危険なハブクラゲ

世界一の猛毒とされるのはオーストラリアウンバチクラゲですが、仲間のハブクラゲは沖縄など南の海にいます。触手は1.5メートル以上に伸び、刺されると激しく痛みます。
重症だと呼吸が抑えられ、数分で心肺停止に至ることも。沖縄では1998年からの25年間で2865件の刺傷が報告され、その約85%が7〜8月に集中しています。
出典:沖縄県衛生環境研究所の資料(2023年)
12. 刺されたときの正しい対処法

刺されたらこすらず、まず海水で洗い流し、残った触手はピンセットや手袋をした手で取り除きます。真水やアルコールは刺胞を発射させるので厳禁です。
酢は種類しだい。ハブクラゲには有効ですが、カツオノエボシには逆効果なので、わからないときは使いません。痛みが強い、息苦しいといった症状があればすぐ受診を。
※温めるか冷やすかは専門家でも意見が分かれています
13. 発電所を止めるクラゲ
大量発生したクラゲが発電所の取水口をふさぎ、発電を止めてしまうことがあります。関西電力は2012年、南港と姫路第二の火力発電所で合わせて135万kW分の出力を抑えたと発表しました。
フランスのグラヴリーヌ原発でも2025年と2026年の8月に原子炉が緊急停止。漁船で監視していても防ぎきれませんでした。
※取水口は、発電所が冷却用の海水を取り込む口のことです
14. クラゲで復活した水族館

山形県の鶴岡市立加茂水族館は、1997年度の入館者が9万2183人まで落ち込み、閉館寸前に追い込まれました。転機は水槽に偶然わいた小さなクラゲ。
展示すると評判を呼び、クラゲ専門の水族館へ方向を変えていきます。2012年には展示種類数でギネス世界記録に認定され、2014年度の入館者は83万人を超えました。
15. 中華料理で食べるクラゲ

食用になるのはヒゼンクラゲ、ビゼンクラゲ、エチゼンクラゲなど。なかでも身がやわらかいのはヒゼンクラゲで、最高級品はビゼンクラゲです。
あのコリコリした食感は、塩とミョウバンに漬けて水を抜く工程を3段階、3週間ほど繰り返した結果。ほとんど水でできた体から水分を抜くと、独特の歯ごたえが生まれます。
※ミョウバンは、食品の加工に使われる身を引き締める働きのある物質です
まとめ
クラゲには脳も心臓もありませんが、経験から泳ぎ方を覚える種がいて、傷つくと幼い姿に戻って何度でもやり直すベニクラゲもいます。
体の約95%が水という頼りない体でありながら、大発生すれば漁の網を破り、発電所の取水口までふさいでしまいます。一方でその姿は、閉館寸前だった水族館を立て直す力にもなりました。
厄介者にも人気者にもなるのがクラゲです。海で見かけたときは、触らずに眺めるくらいがちょうどよさそうですね。
あわせて読みたい
更新日:2026年9月10日(木) 11:48

リスの雑学10選!埋め忘れた木の実が森を作る
鹿の雑学9選!傷つけると死罪だった神の使い
豚の雑学13選!警察に採用された探知イノシシがいる
キツネの雑学13選!地球の磁場を感じ取り雪の下を正確に狩る
カバの雑学13選!草食のはずが実は肉も食べている
トラの雑学10選!尿の匂いがポップコーンに似て香ばしいとか
イノシシの雑学12選!鼻先だけで70kgを持ち上げる怪力
ラッコの雑学11選!手つなぎ睡眠は野生ではほぼ見られない