赤とんぼの雑学12選!「赤とんぼ」という種類はいない

夕焼け空をすいすい飛ぶ赤とんぼは、秋の訪れを感じさせる身近な虫です。童謡「赤とんぼ」にも歌われ、子どものころに追いかけた思い出を持つ人も多いでしょう。

ところが、体が赤くなる仕組みや夏のあいだの居場所は意外と知られていません。「赤とんぼ」という名前の種類がいないことや、数が大きく減っていることもそのひとつ。

そんな赤とんぼにまつわる雑学を12個ご紹介します。研究にもとづく項目には出典を添えています。

赤とんぼの体と暮らしの秘密

まずは体の色の変わり方や夏の過ごし方など、赤とんぼそのものの素顔から見ていきましょう。

1. 生まれたては黄色い赤とんぼ

生まれたては黄色い赤とんぼ

羽化したばかりのアキアカネは、オスもメスも黄色っぽい体です。メスの多くは黄色のままで真っ赤にはなりませんが、オスは成熟すると色素が黄色の型から赤い型に変わり、赤く染まるのです。

ビタミンCを注射すると未成熟のオスも成熟したメスも赤くなることが、実験でわかりました。赤い色素には紫外線を防ぐ日焼け止めの役目という説もあります。

※赤くなる色素はオモクロームと呼ばれ、ビタミンCは色素を赤い型に変える役目を果たします。

出典:産業技術総合研究所の研究チーム(PNAS、2012年)

2. 夏は近所の山の森で過ごす

夏は近所の山の森で過ごす

アキアカネは初夏に田んぼで羽化すると、暑い時期は山へ移って秋に戻ります。避暑地は高原のイメージですが、平地に近い中くらいの山の中にもいることが分かりました。

中部〜近畿の調査では、晩夏の数と最も関係が深いのは気温25℃前後の標高400〜600mの森。秋の数は、周囲5km以内の約4割が森林のとき最多でした。

※アキアカネは1年に1世代で、秋に産んだ卵が冬を越し、春にふ化します。

出典:森林総合研究所の研究チーム(Entomological Science、2026年)

3. 顔まで赤いのはナツアカネ

顔まで赤いのはナツアカネ

成熟したナツアカネのオスは、胸や顔の正面まで真っ赤になります。アキアカネはそこまで赤くならないため、秋に見かける一番赤い赤とんぼがナツアカネということもあるのです。

見分けるポイントは胸の横の3本の黒い筋。真ん中の筋の先がとがっていればアキアカネ、スパッと切れたように角張っていればナツアカネです。

※ナツアカネはアキアカネと違い、夏も山へ移らず低地で過ごします。

4. 赤とんぼという種はいない

赤とんぼという種はいない

「赤とんぼ」は種の名前ではなく、主にトンボ科アカネ属をまとめた呼び名です。日本には約20種がいて、狭い意味ではアキアカネだけを指すこともあります。

ところがアカネ属にはナニワトンボのように赤くならない種もいるのです。逆に別の属のショウジョウトンボや、黄色いウスバキトンボまで赤とんぼと呼ばれています。

※日本のアカネ属を21種とする資料もあります。

5. お盆に群れる黄色い旅人

お盆に群れる黄色い旅人

お盆のころに群れ飛ぶ「盆とんぼ」「精霊とんぼ」の正体は、黄色っぽいウスバキトンボです。毎年5月ごろ南から海を渡ってきて、世代を重ねながら北上し、北海道やカムチャッカまで達します。

ヤゴは休眠ができず水温4℃以下で死んでしまうため、九州より北では冬を越せないとされています。帰り道のない片道の旅なのです。

※飛来するのは沖縄やさらに南の地域からで、1か月あまりで世代交代するといわれます。

消えゆく赤とんぼと童謡の裏側

かつて田んぼの周りにあふれていた赤とんぼは、ここ数十年で大きく数を減らしています。あわせて、童謡「赤とんぼ」の歌詞と作詞者の生い立ちにも目を向けます。

6. アキアカネが激減したわけ

アキアカネが激減したわけ

アキアカネは2000年前後から急減し、1990年代〜2000年代に100分の1以下になったと分析されています。いくつかの府県で絶滅危惧種などに指定されました。

主な原因は、稲の苗箱に使う殺虫剤。ただ農薬だけでは激減は起きず、田んぼの水はけをよくする整備でヤゴの育つ水が減ったことと重なった、というのが結論です。

※地域によっては1000分の1になったという報告もあります。殺虫剤はフィプロニルやイミダクロプリドで、1990年代半ばから全国で出荷されました。

出典:中西らによる統合解析(保全生態学研究、2024年)

7. 「負われて」はおんぶのこと

「負われて」はおんぶのこと

童謡「赤とんぼ」の「負われて見たのは」は、子守の背中におんぶされて見たという意味です。「追われて」だと思い込んでいた人も多いでしょう。

3番の「十五で姐やは嫁に行き」の姐やも、作詞者三木露風の実の姉ではありません。子守奉公に来ていた少女のことで、十五は彼女が嫁いだ年齢なのです。

※姐やは「ねえや」と読みます。

8. 露風は幼くして母と別れた

露風は幼くして母と別れた

三木露風は1889年(明治22年)、兵庫県龍野町に生まれました。幼いころ父の放蕩で両親が離婚し、母は鳥取の実家へ帰って露風は祖父に育てられます。

詞の発表は1921年(大正10年)、北海道の修道院で講師をしていた時期です。山田耕筰の作曲はその6年後に4番の「とまっているよ竿の先」は、12歳ごろの俳句が元とされます。

※龍野町は現在の兵庫県たつの市です。放蕩は酒や遊びにふけることを指します。

歴史と文化の中の赤とんぼ

トンボは古くから日本人に親しまれ、国の呼び名にまで登場する虫です。神話や文学からプロ野球まで、すぐれた目の話も交えてたどります。

9. 日本の古名はトンボの国

日本の古名はトンボの国

『日本書紀』では、神武天皇が国を「蜻蛉の臀呫のようだ」と評したのが「秋津洲」の名の由来。臀呫は雌雄がつながった姿と解されることが多く、日本はトンボの国でした。

同書には天皇を刺したアブをトンボがくわえ去る話もあり、この話が「勝ち虫」の由来のひとつとされ、前へ進むイメージとあわせて兜の飾りに好まれました。

※蜻蛉は「あきづ」、臀呫は「となめ」、秋津洲は「あきづしま」と読みます。国名の由来には諸説あり、アブの話は雄略天皇の逸話です。

10. 色を感じる遺伝子は人の約7倍

色を感じる遺伝子は人の約7倍

トンボは色の感じ方にかかわるオプシン遺伝子を15種類以上持つことが、産総研などの研究でわかりました。アキアカネは20種類、最多のギンヤンマは33種類です。

ヒトは3種類、多くの動物は2〜5種類ほど。遺伝子の数がそのまま見える色の数になるわけではありませんが、視覚にたよって暮らす虫であることがうかがえます。

※複眼は1万〜3万個ほどの小さな目の集まりで、真後ろ以外のほぼ全方向を見渡せるといわれます。

出典:産業技術総合研究所などの研究チーム(PNAS、2015年)

11. 大病のあと漱石が詠んだ句

大病のあと漱石が詠んだ句

夏目漱石は1910年(明治43年)8月、療養先の伊豆・修善寺で約800gもの血を吐き、一時危篤に陥りました。「修善寺の大患」と呼ばれる出来事です。

その回復期の句として地元が挙げるのが「生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉」で、死のふちから戻って空を見上げる喜びが伝わってきます。宿の跡地には2018年に句碑が建てられました。

※同じ年には「肩に来て人なつかしや赤蜻蛉」という句も詠んでいます。療養の様子は随筆『思ひ出す事など』に記されています。

12. 赤とんぼが止まる選手は危ない

赤とんぼが止まる選手は危ない

プロ野球界には「赤とんぼが止まる選手は戦力外になる」という言い伝えがあります。秋季練習のころ、とんぼが止まるほどじっとしている選手は先がないという意味です。

2024年1月のテレビ番組で巨人の秋広優人選手が、先輩から聞いて赤とんぼから逃げていると明かしました。楽天や中日の選手からも似た話が出ています。

※所属チームは発言当時のものです。楽天の小深田大翔選手、中日の小笠原慎之介選手らが同様の話をしています。

まとめ

赤とんぼは特定の種の名前ではなく、主にアカネ属のトンボをまとめた呼び名です。代表格のアキアカネは黄色い体で生まれ、オスは成熟すると色素の変化で赤くなります。暑い夏は平地に近い山の森で過ごし、秋に里へ戻ってくるのです。

一方でアキアカネは、農薬と田んぼの環境の変化が重なって大きく数を減らしました。童謡に歌われた夕焼けの風景は、当たり前のものではなくなりつつあります。

秋の空に赤とんぼを見かけたら、顔の色や胸の筋にも目を向けてみてはいかがでしょう。

あわせて読みたい

更新日:2026年9月24日(木) 10:08

コメントを入力

TOP