同じ1万円なのに、カードで払うと気が大きくなる。セールの赤い値札を見ると、思わず手が伸びる。そんな経験はありませんか。
お金の使い方は、計算だけで決まるわけではありません。値段の見せ方や払い方、周りの人との比較によって、私たちの感じ方は揺れ動きます。心理学や行動経済学では、こうしたクセが多くの実験で確かめられてきました。
そんなお金の心理学にまつわる雑学を12個ご紹介します。研究にもとづく項目には出典を添えています。
払い方しだいで財布がゆるむ
同じ金額でも、いつ、どうやって払うかでお金の使い方は変わります。まずは支払い方にまつわる雑学です。
1. カード払いだと倍払いがち

MITの学生に観戦チケットの値段を付けてもらう実験では、カード払いの組が現金払いの組より高い額を書き、試合によっては約2倍になりました。お札が手元から減る「支払いの痛み」が弱まるためだとされます。
別の研究では、高すぎる値札を見ると痛みや嫌悪に関わる脳の部位が反応し、買わない判断と結びついていました。
出典:マサチューセッツ工科大学の研究チーム(Marketing Letters・2001年)、スタンフォード大学などの研究チーム(Neuron・2007年)
2. ジム会費は1回17ドル

アメリカのスポーツジムで月70ドルを超えるプランを選んだ会員は、平均で月4.3回しか通っていませんでした。1回あたり約17ドルで、1回10ドルの回数券より割高です。
入会時に通う回数を見込みすぎるのが一因とみられます。会費をまとめて払うと、払った直後だけよく通い、次第に足が遠のく傾向も報告されています。
出典:カリフォルニア大学バークレー校などの研究チーム(American Economic Review・2006年)、ハーバード大学などの研究チーム(Journal of Consumer Research・1998年)
3. スタンプ2個おまけの魔法

コーヒー店で、10個集めると1杯無料になるカードと、12個の枠のうち2個が最初から押されたカードを配る実験が行われました。
必要な数はどちらも10個ですが、2個押されたカードの方が早く満了しています。ゴールが近く見えるほどやる気が増す「目標勾配効果」の表れです。
出典:コロンビア大学の研究チーム(Journal of Marketing Research・2006年)
4. 老けた自分を見ると貯金する

VRで年をとった自分の顔と向き合う実験では、参加者は今の自分の顔を見た人より、給料から老後資金に回す割合を増やしました。ある実験では配分が約33%多くなっています。
将来の自分が他人のように感じられると、今の楽しみを優先しやすくなるためだとみられます。
出典:スタンフォード大学などの研究チーム(Journal of Marketing Research・2011年)
値札にだまされる私たちの脳
値段そのものより、その見せ方に心が動くことがあります。売り場や案内に隠れた仕掛けを見ていきましょう。
5. 高いワインほどおいしい

同じワインを「5ドル」と「45ドル」と伝えて飲み比べてもらうと、参加者は高い方をおいしいと答えました。
飲んでいる最中の脳を調べると、快さに関わる部位の活動も高いほうのワインで強まっていました。値段の情報が、思い込みにとどまらず味の感じ方そのものを変えていたのです。
出典:カリフォルニア工科大学などの研究チーム(PNAS・2008年)
6. 元値に釣られるセール

最初に見た数字が判断の基準になる現象を「アンカリング」と呼びます。「1万円→5000円」と書かれていると、5000円の値札だけを見たときより安く感じやすくなります。
ただし実際には売られていない元値を並べると、日本では二重価格表示として景品表示法の問題になることがあります。
出典:ヘブライ大学の研究チーム(Science・1974年)
7. タダの一言が最強

高級トリュフチョコを15セント、キスチョコを1セントで売ると、73%の人がトリュフを選びました。
そこで両方を1セントずつ値下げし、トリュフ14セント、キスチョコ無料にすると、69%がキスチョコに流れています。値段の差は同じなのに、0円という響きには、ほかの値段にはない引力があります。
出典:ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』
8. 残り2枚のクッキーの誘惑

瓶に入ったクッキーを味見して評価する実験では、10枚入りの瓶より2枚入りの瓶のクッキーの方が高く評価されました。
さらに、10枚あった瓶が目の前で2枚に減らされた場合に、評価は最も高くなっています。通販の「残りわずか」という表示も、この心理に訴えるものです。
出典:アメリカの研究チーム(Journal of Personality and Social Psychology・1975年)
9. 誰も選ばないおとりの役目

エコノミスト誌の購読案内には「ウェブ版59ドル」「印刷版125ドル」「セット125ドル」が並んでいました。学生に選ばせるとセットが84%で、印刷版を選んだ人はゼロでした。
ところが印刷版を消すと、68%がウェブ版に移りました。誰も選ばない案が、セットをお得に見せていたわけです。
出典:ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』
損と得と幸せを測る物差し
最後は、損や得をどう感じるか、お金にどれだけ満足できるかにまつわる雑学です。
10. 損の痛みは得の約2倍

同じ金額でも、失ったときの痛みは得たときの喜びより大きく感じられます。これを「損失回避」といい、1992年の研究では約2.25倍と見積もられました。
2024年に多数の研究をまとめた分析では平均約1.96倍でしたが、もっと小さい値を示す研究や、効果の強さを疑う声もあります。
出典:スタンフォード大学などの研究チーム(Journal of Risk and Uncertainty・1992年)、カリフォルニア工科大学などの研究チーム(Journal of Economic Literature・2024年)
11. 自分のマグは倍の値打ち

大学の授業でマグカップを半数の学生に配り、持ち主には売値を、持っていない人には買値を付けてもらう実験がありました。
すると持ち主の付けた売値は、買い手の値の約2倍に達しました。自分の物になった途端に価値を高く見積もるこの傾向は「保有効果」と呼ばれます。
出典:コーネル大学などの研究チーム(Journal of Political Economy・1990年)
12. 年収より気になる比べる相手

「自分の年収は5万ドルで周りは2.5万ドル」と「自分は10万ドルで周りは20万ドル」のどちらの世界に住みたいかを尋ねた調査があります。
物価は同じという条件なのに、約半数が年収の低い前者を選びました。お金の満足度は、金額そのものより周りとの差に左右されやすいようです。
出典:ハーバード大学などの研究チーム(Journal of Economic Behavior & Organization・1998年)
まとめ
お金の心理学にまつわる雑学を12個ご紹介しました。
カード払いの人は現金払いの人より高い値段を付けやすく、スタンプカードは最初に2個押されているだけで早く満了しました。値札の面でも、同じワインを高いと伝えるだけでおいしく感じられ、無料になったチョコには人が一気に流れています。
損の痛みは得の喜びの約2倍とされますが、その大きさには研究によって幅があります。お金をめぐる判断は、金額以外のさまざまなものに揺さぶられているのです。
更新日:2026年9月19日(土) 06:32

税金の雑学12選!日本には1982年まで犬税があった
通貨の雑学10選!古代に貝殿がお金として世界で通用した
ローンの雑学10選!ローン中の車は自分のものじゃない?
金の雑学10選!超新星爆発で生まれた宇宙由来の物質だ
宝くじの雑学12選!44億円を着ぐるみで受け取った男
インフレの雑学10選!100兆ドル札が約40セントになった国
通貨の雑学10選!古代に貝殿がお金として世界で通用した
電子マネーの雑学10選!支払い全てが記録され家計管理に役立つ