カマキリの雑学12選!頭がなくてもオスは交尾をやめない

カマキリのオスは、交尾のたびにメスに食べられてしまうのかというと実はそうとは限らず、逆に頭を失っても交尾を続けたという実験まであります。

鎌のような前脚で獲物をとらえる姿はおなじみですが、その体や暮らしには意外な仕組みがたくさん隠れています。寄生虫との関係や、昔からの言い伝えも興味深いものばかりです。

そんなカマキリにまつわる雑学を12個ご紹介します。研究にもとづく項目には出典を添えています。

共食いと命のつなぎ方

カマキリといえば、まず思い浮かぶのが共食いかもしれません。最初は、命をつなぐ仕組みにまつわる話です。

1. オスが食べられる本当の割合

オスが食べられる本当の割合のイラスト

「オスは必ず食べられる」と思われがちですが、実は違います。ヨーロッパのウスバカマキリの野外観察では、共食いは交尾の31%でした。調査により13〜31%ほどと幅があります。

1935年の実験では、頭を失ったオスが交尾を続けることも確認されました。交尾を抑えるブレーキ役の神経が、頭と一緒に失われるためとされます。

1980年代の研究では、餌が十分で人が見ていない環境だと、オスは念入りに求愛し共食いも減りました。実験室の照明や観察者が影響した可能性があるのです。ただし野外でも起きるため、実験室だけの現象ではありません。

※「共食い(ともぐい)」は、同じ種類の仲間を食べることです。

出典:Animal Behaviour(1992年)/The Biological Bulletin(1935年)

2. 食べられたオスは卵の栄養に

食べられたオスは卵の栄養にのイラスト

2016年、チュウゴクオオカマキリで栄養の行き先を追う研究が行われました。オスに目印をつけた餌を与え、その成分がどこへ行くかを調べたのです。

オスを食べたメスは卵を約88個、食べなかったメスは約37個産みました。オス由来の栄養は、卵づくりに使われていたことになります。

出典:英国王立協会紀要(2016年)

3. 寿命は半年、冬は卵で越す

寿命は半年、冬は卵で越すのイラスト

秋になると、オオカマキリのメスは泡を固めたような卵鞘を産みます。野外で産むのは2〜3個ほどとみられ、寒い冬は卵鞘の中で卵のまま過ごすのです。暖かくなる4月〜5月ごろ、1つの卵鞘から100〜200匹ほどの幼虫がいっせいに出てきます。

脱皮をくり返して7月ごろに成虫になると、残された時間は2〜3か月ほど。霜が降りるころには一生を終え、生まれてからおよそ半年の短い命です。

体長は約7〜10cmでメスのほうが大きく、噛むことはあっても毒はないので、人が深刻なけがをする心配はありません。

※「卵鞘(らんしょう)」は、卵を包む泡のかたまりのことです。

※幼虫が出てくる時期には、地域によって差があります。

出典:日本自然保護協会/Honda

体に隠れたすごい仕組み

カマキリの体には、見た目からは想像しにくい仕組みがいくつもあります。目や耳にまつわる研究を見ていきましょう。

4. 目が合う黒い点の正体

目が合う黒い点の正体のイラスト

カマキリの目の黒い点は、本物の瞳ではなく偽瞳孔です。複眼は細い管のような小さな目の集まりでできています。

こちらを向いた管だけ奥まで見通せて、光が返らないため黒く見えるのです。角度に合わせて点が動くので、目が合うように感じます。夜は光を集めやすくするため、目全体が黒っぽくなります。

※「偽瞳孔(ぎどうこう)」は、瞳のように見える黒い点のことです。

※「複眼(ふくがん)」は、たくさんの小さな目が集まった目のことです。

出典:下関市豊田ホタルの里ミュージアム

5. 耳は胸の真ん中に1つだけ

耳は胸の真ん中に1つだけのイラスト

カマキリの耳は、後ろ脚の付け根の間、胸の腹側の真ん中に1つだけあることが、1986年に見つかりました。

コウモリの超音波を聞くと、飛びながら急降下や旋回をして逃げます。2008年の実験では、耳が聞こえる個体の76%が逃げ切り、耳をふさいだ個体は34%まで下がっています。

※「超音波(ちょうおんぱ)」は、人の耳には聞こえないほど高い音のことです。

出典:Science(1986年)/Journal of Experimental Biology(2008年)

6. 3Dメガネで確かめた立体視

3Dメガネで確かめた立体視のイラスト

2016年、イギリスのニューカッスル大学がカマキリに小さな3Dメガネをかけました。カマキリは赤が見えにくいため、レンズは赤青ではなく青と緑にして、蜜ろうなどで頭に貼り、虫の映像を見せる実験です。

平面の映像は無視しましたが、立体の映像には鎌を伸ばし反応しました。

※「立体視(りったいし)」は、物を奥行きのある形で見ることです。

出典:ニューカッスル大学(2016年)

7. 小鳥まで狩ることがある

小鳥まで狩ることがあるのイラスト

カマキリが小鳥を捕まえた記録は世界中にあります。2017年の論文では、南極以外の全大陸・13か国から147例が集められました。

報告の7割以上は米国で、犠牲の大半はハチドリです。庭のハチドリ用の給餌器や、花の近くで起きた例が多く見られます。

※「給餌器(きゅうじき)」は、鳥に餌をあげるための道具です。

出典:Wilson Journal of Ornithology(2017年)

寄生虫と外来種の意外な話

カマキリを取り巻くのは、獲物や天敵だけではありません。体の中にすむ寄生虫や、海外から来た仲間の話です。

8. 水面の光に誘われる理由

水面の光に誘われる理由のイラスト

ハリガネムシは、カマキリの体内で育つ寄生虫です。最後は宿主を水に飛び込ませ、生まれた水中へ戻ります。

2021年の研究で、感染したカマキリは水面の反射光に多い水平偏光に引き寄せられると分かりました。野外の実験では、池に入った16匹のうち14匹が偏光の強い池を選んでいます。

2024年には、同じ光を反射するアスファルトの道路に誘われている可能性も示されました。

※「宿主(しゅくしゅ)」は、寄生虫が取りつく相手の生き物のことです。

※「水平偏光(すいへいへんこう)」は、水面などで反射した光に多い、向きのそろった光のことです。

出典:神戸大学(2021年)/京都大学(2024年)

9. 操る遺伝子はカマキリ由来?

操る遺伝子はカマキリ由来のイラスト

2023年、京都大学や神戸大学などがハリガネムシのゲノムを調べました。すると、カマキリとよく似た遺伝子が約1300個見つかったのです。

これらはカマキリから移ってきた可能性があり、宿主を操る時期に働きが強まる遺伝子にも、多く含まれていました。

※「ゲノム」は、生き物が持つ遺伝情報の全体のことです。

出典:京都大学(2023年)

10. 竹ぼうきに付いて来た外来種

竹ぼうきに付いて来た外来種のイラスト

ムネアカハラビロカマキリは、2000年ごろ東京で最初に見つかった外来種です。中国産の竹ぼうきに卵鞘が付いて来たとみられます。

2021年時点で23都府県に広がりました。在来のハラビロカマキリが減った地域もあり、主な原因は繁殖干渉とされます。

※「繁殖干渉(はんしょくかんしょう)」は、別の種類のオスがメスに求愛して、繁殖を邪魔することです。

出典:森林総合研究所/バイオーム

人とカマキリの関わり

カマキリは、昔から人の暮らしや言葉の中にも登場してきました。最後は言い伝えと故事の話です。

11. 卵の高さで大雪がわかる?

卵の高さで大雪がわかるのイラスト

「カマキリは雪に埋まらない高さに卵を産む」という言い伝えがありましたが、1997年には、これを統計で説明した研究が博士論文になり本にもなりました。

これを検証したのが、弘前大学の安藤喜一名誉教授です。雪の下に約4か月あった卵鞘47個を調べると、孵化率は97.9%でした。

雪に埋もれても、卵はほとんどかえっていたのです。産む高さも18〜180cmとばらばらで、積雪との関係は一貫しておらず、言い伝えの根拠は、専門家の検証で否定されました。

出典:JT生命誌研究館

12. 蟷螂の斧は勇気をほめた話

蟷螂の斧は勇気をほめた話のイラスト

「蟷螂の斧」は、中国の『韓詩外伝』などに出てくる故事です。斉の荘公の車の前で、カマキリが前脚を振り上げて車輪に立ち向かいました。荘公は「人なら天下の勇士だろう」と言い、車を回して避けたのです。

今では無謀な抵抗のたとえになってしまいましたが、『荘子』では最初から無謀さの比喩で使われていました。

※「蟷螂(とうろう)」は、カマキリの漢名です。

まとめ

カマキリのオスは必ず食べられるわけではなく、共食いは交尾の一部で起きるものでした。食べられたオスの栄養が卵に使われていたという研究も、命のつなぎ方として印象的です。

胸の真ん中にある耳や、3Dメガネで確かめられた立体視など、体の仕組みにも驚きがありましたし、寄生虫のハリガネムシとの関係は、今も研究が進んでいる分野です。

庭先で見かけたときは、目の黒い点がこちらを追ってくる様子を観察してみてはいかがでしょうか。

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更新日:2026年9月29日(火) 09:39

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