夏になると雑木林でひときわ目を引くカブトムシは、子どものころに一度は追いかけたという人も多い、昔からおなじみの人気者です。
ところが、その体や暮らしぶりをあらためて調べてみると、力持ち伝説の意外な結末や、昼間に樹液を吸い続ける集団、角ができあがる一瞬の出来事、天敵に狙われる理由など、知らなかった顔が次々と見えてきます。
飼育ケースをのぞいているだけでは気づけない、そんなカブトムシにまつわる雑学を11個ご紹介します。
1. 力持ち伝説はどこまで本当か

かつてギネスブックには、カブトムシは体重の850倍を持ち上げると載っていました。
しかし生理学者のロジャー・クラムさんが背中に錘を載せてトレッドミルを歩かせて確かめると、安定して歩けるのは体重の約30倍まで、約100倍では立っているのがやっとだそうです。
2. 昼も樹液に来るカブトムシ

クヌギでは夜に活動するカブトムシですが、シマトネリコという外来の庭木では昼間も樹液を吸い続けます。
当時小学6年生の柴田亮さんが自宅の庭木で個体を見分けて観察し、山口大学の小島渉講師との共著論文が2021年にアメリカの生態学誌エコロジーに掲載されました。
3. 角は一瞬でふくらんで完成する

カブトムシの角は、幼虫から蛹に脱皮する瞬間に、折り畳まれた袋のような組織へ体液が送り込まれて一気に展開してできあがります。
名古屋大学の2017年の研究報告によると、立体的な角の形は、まだ袋が折り畳まれている段階ですでに決まっているのだそうです。
4. 蛹が振動で送る土の中の合図

土の中の蛹は、体を回して蛹室と呼ばれるまゆのような部屋の壁を叩き、こつこつと振動を出すことがあります。
東京大学の2011年の研究では、この振動を受け取った近くの幼虫が10分ほど動きを止め、掘り進んで蛹室を壊してしまうのを避けていると報告されました。
5. 長い角は天敵にも見つかる

東京大学が2014年に都市の緑地で行った調査では、カブトムシを食べていた捕食者はタヌキとハシブトガラスの二種でした。
メスよりオスが、角の短いオスより長いオスがよく食べられており、角はメスに好かれる武器であると同時に、目立つ弱点にもなっているようです。
6. 後翅は折り紙のように畳まれる

カブトムシの後ろの翅は折り紙のように畳まれ、広げる専用の筋肉を使わずに開いたり収まったりします。
2024年にネイチャー誌で発表されたスイスの研究チームによると、前の翅の開閉と羽ばたきの力による受け身の仕組みで、飛行ロボットへの応用も進んでいます。
7. 北海道のカブトムシは外来種

夏の風物詩として親しまれるカブトムシですが、もともと北海道には自然分布していなかったと考えられています。
1970年代以降にペットとして持ち込まれた個体が野外に定着したとみられており、影響が心配される国内外来種として北海道庁も注意を呼びかけています。
8. 樹液の店を開ける小さな職人

カブトムシが集まる樹液は、木がひとりでに流しているわけではありません。
ボクトウガという蛾の幼虫がクヌギなどの幹に穴を開けて樹液を出させ、寄ってきた小さな虫を食べていることが知られており、カミキリムシによる食害なども樹液があふれる原因になります。
9. 早朝に樹液場を奪うスズメバチ

夜のあいだ樹液場を占領していたカブトムシも、朝になると立場が逆転することがあります。
山口大学が2022年に生態学誌エコロジーで報告した観察では、オオスズメバチがカブトムシの脚に何度も噛みつき、数分のうちに木から投げ落として樹液場を奪っていました。
10. 死骸を食べる小さなカブトムシ

コカブトは全長2センチほどの小さなカブトムシで、昆虫の死骸などを好んで食べる肉食性の強い一面を持っています。
日本のほぼ全域に分布していて数が少ないわけではないものの、樹液場にはあまり姿を見せないため、探そうとしてもなかなか出会えない存在です。
11. 湿ると色が変わる王者の翅

ヘラクレスオオカブトは、乾いているときは黄土色、湿ると黒っぽく見えるという不思議な体を持っています。
塗料が変わるわけではなく、前の翅の内部にあるスポンジのような細かい構造に水が入り込むことで、光の反射が変わる構造色の変化だと考えられています。
更新日:2026年7月13日(月) 11:46

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