髪の毛の雑学14選!10万本でゾウ2頭を支える計算

毎日なにげなく洗ったり整えたりしている髪の毛。

実はその1本1本が、体の中でもかなり変わった性質を持つ存在です。

切っても痛くないのに毎日伸び続け、体の中を通った物質の記録まで残しています。

さらに歴史をのぞいてみると、髪は身分や流行を映す鏡になり、ときには一揆や税金が生まれる理由にまでなりました。

そんな髪の毛にまつわる雑学を14個ご紹介します。

研究にもとづく項目には出典を添えています。

髪のしくみと意外な数字

まずは、私たちの頭の上で毎日起きていることから見ていきます。

数字にしてみると、髪の毛はなかなか規格外の存在です。

1. 髪は1日に0.3mm伸びる

髪は1日に0.3mm伸びる

髪の毛は頭全体で約10万本から12万本あるとされます。

1日に伸びる長さは約0.3〜0.4mmで、1か月にすればおよそ1〜1.3cmです。

髪には生えかわりの周期があるため、毎日少しずつ古い髪が抜けていきます。

計算すると1日平均で約68本、100本程度までは正常の範囲と考えられています。

朝のブラシに何本かついていても、あまり心配しすぎなくてよさそうです。

出典:日本毛髪科学協会「毛髪に関する数字」

2. 理論上は15トンを支える

理論上は15トンを支える

太さ0.08mmほどの髪1本は、150g前後の力がかかると切れるといわれます。

10万本で単純計算すると約15トンとなり、アフリカゾウ2頭分ほどに相当します。

オスのアフリカゾウは1頭で約6トンもあります。

ただし頭皮から髪を引き抜く力は1本およそ50gしかなく、10万本でも約5トンです。

つまり理論上は、髪が切れるより先に頭皮のほうが負けてしまう計算になります。

出典:日本毛髪科学協会「毛髪に関する数字」

3. 切っても痛くない理由

切っても痛くない理由

頭皮の外に出ている髪は、かたく変化した死んだ細胞の集まりです。

痛みを感じる仕組みがないので、はさみを入れても痛くありません。

生きているのは頭皮の中にある毛母細胞のほうで、新しい細胞が次々につくられ、押し出されるようにして髪は伸びていきます。

そのため、いちど傷んだ部分が自然に元どおりになることはなく、伸びた分を切るしかないのです。

※「毛母細胞(もうぼさいぼう)」は髪をつくり出すもとになる細胞です。

4. まつ毛が長くならない訳

まつ毛が長くならない訳

髪をつくる毛包には、どれくらいの期間伸び続けるかというタイマーのような仕組みがあり、その長さは遺伝的に決まっています。

頭髪の成長期は2〜7年と長く、髪1本の寿命は男性で3〜5年、女性で4〜6年ほど。

その間に1本が伸びる長さは、計算上およそ50〜90cmになります。

一方で腕の毛は数週間、まつ毛は1か月から数か月で成長が止まるため、一定以上は長くなりません。

頭髪だけタイマーが長い理由は、分子のレベルではまだ研究が続いています。

※「毛包(もうほう)」は髪を包んで育てる、皮膚の中の器官です。

出典:Journal of Clinical Medicineに掲載されたレビュー論文(2023年)

5. ストレスが髪の色を奪う

ストレスが髪の色を奪う

一晩で髪が真っ白になったという言い伝えは各地に残っていますが、医学的に確かめられた例はありません。

ただしストレスと白髪の関係そのものは、2020年にハーバード大学のチームがNature誌に発表した研究で示されています。

強いストレスを受けると交感神経がノルアドレナリンという物質を出し、髪の色をつくる色素幹細胞が活性化しすぎて使い果たされてしまうのです。

マウスの実験では数日で幹細胞が失われ、いちど失われた色は戻らなかったと報告されています。

※「色素幹細胞」は、髪に色をつける細胞のもとになる細胞です。

出典:ハーバード大学の研究チーム(Nature・2020年)

6. 死後に伸びるのは錯覚

死後に伸びるのは錯覚

亡くなったあとも髪や爪が伸び続ける、という話を聞いたことがあるかもしれませんが、これは俗説と考えられています。

人が亡くなると体から水分が失われ、皮膚などの軟らかい組織が少しずつ縮んでいきます。

その結果、髪や爪そのものの長さは変わらないのに、根元が表に出て相対的に長くなったように見えるのです。

髪が伸びるには生きた細胞が働き続ける必要があり、その働きは死とともに止まります。

7. 髪は体の記録装置になる

髪は体の記録装置になる

髪は1か月に約1cmずつ伸びるので、体の中を通った物質が根元から先端へと順番に残っていきます。

この性質を利用するのが毛髪の薬物検査です。

尿の検査でさかのぼれるのが摂取後3〜5日程度なのに対し、髪なら最大でおよそ4か月前まで調べられるとされます。

根元から先端へ区切って分析すれば、いつごろ使われたかの見当もつくそうです。

ただし外から付着した分をどう扱うかなど、精度や公平性をめぐる議論もあります。

日本の髪型と歴史の事件

髪は見た目の問題にとどまらず、身分や時代の空気をあらわすものでもありました。

日本の歴史をたどると、髪型そのものが事件の火種になった場面も出てきます。

8. 身長より長い平安の黒髪

身長より長い平安の黒髪

平安時代の貴族の女性にとって、髪の長さは美しさをはかるものさしのひとつでした。

自分の身長より長い髪が理想とされ、座れば床に広がるほどの黒髪が好まれたと伝えられます。

『源氏物語』に登場する末摘花は、着ている衣の裾よりさらに一尺、およそ30cmも長い髪の持ち主として描かれています。

物語の中でわざわざ長さが書き添えられるほど、髪は人となりを語るものだったのでしょう。

※「末摘花(すえつむはな)」は『源氏物語』に登場する女性です。

9. 月代は蒸れ対策という説

月代は蒸れ対策という説

武士が頭のてっぺんを剃り上げた月代は、兜をかぶったときの蒸れを逃がすためという説が有力ですが、はっきりした定説はありません。

江戸時代の有職故実家である伊勢貞丈は、戦場で気が逆さに上るのを抜くためだと説明しています。

古い例としては『玉葉』の安元2年、1176年の記事に平時忠の月代が出てきますが、そこにはたいへん見苦しいと書かれています。

つまり登場したころは、みっともない髪型として見られていたようです。

※「月代(さかやき)」は頭のてっぺんを剃った部分のことです。

※「有職故実(ゆうそくこじつ)」は昔の作法や制度を調べる学問です。

10. ちょんまげは禁止せず

ちょんまげは禁止せず

1871年、明治4年に出された散髪脱刀令は、髪型を自由にしてよいという布告で、ちょんまげを禁止したものではありませんでした。

それでも反発は強く、1873年には敦賀県で約3万人が参加したと伝えられる一揆が起き、6人が死刑になっています。

その一方で1872年には東京府が女性の断髪を禁じており、男性は自由なのに女性は禁止という、ねじれた状態も生まれました。

※「散髪脱刀令(さんぱつだっとうれい)」は髪型と帯刀を自由にした明治政府の布告です。

11. 髪でつくった巨大な綱

髪でつくった巨大な綱

京都の東本願寺は1864年の火災で焼け、明治になって再建が進められました。

ところが巨大な木材を引き上げる綱に麻縄を使うと、重みで切れてしまいます。

そこで全国の女性の信者が自分の髪を寄進し、髪と麻を編み合わせた毛綱が53本つくられました。

最大のものは長さ110m、太さ40cm、重さ約1トンにもなったと伝えられます。

今も長さ69m、太さ30cm、重さ375kgの毛綱が寺に展示されています。

※「毛綱(けづな)」は人の髪を編み込んでつくった綱のことです。

世界の髪文化と意外な使い道

最後は海外へ目を向けます。

髪は装いの主役になり、思い出をとどめる品になり、そして今は海を守る道具にもなっています。

12. 髪粉に税がかかった話

髪粉に税がかかった話

18世紀のヨーロッパでは、白い粉をふりかけた髪型やかつらが流行しました。

フランスの盛り髪は豚の脂でつくったポマードと小麦粉の粉で固められ、高さ約91cmに達したと当時の手紙に記されています。

イギリスは1795年、この髪粉に年1ギニーの税をかけました。

すると納税者は1812年の46,684人から1855年には997人にまで減り、流行そのものが静かに消えていきます。

税は1861年に廃止されました。

13. 髪を編んだ形見の宝飾品

髪を編んだ形見の宝飾品

19世紀のイギリス、ヴィクトリア朝では、亡くなった家族の髪を編んでブレスレットやブローチに仕立てるヘアジュエリーが流行しました。

写真がまだ高価だった時代、髪は故人をそのまま手元に残せる数少ない品だったのです。

1861年に夫のアルバート公を亡くしたヴィクトリア女王は、自身が世を去る1901年までおよそ40年間喪に服し、アルバート公の髪を入れたロケットを身につけていたと伝えられます。

女王のその姿が、流行をいっそう後押ししたといわれます。

14. 髪が海の重油を吸い取る

髪が海の重油を吸い取る

髪の主な成分であるケラチンには油を吸い寄せる性質があり、約450g、1ポンドの髪が1分でおよそ1リットルの油を吸うとされます。

2020年にモーリシャス沖で日本の貨物船わかしおが座礁して重油が流れ出したとき、住民は美容院などから髪を集め、藁などと一緒に布やストッキングに詰めて手作りのオイルフェンスをつくりました。

アメリカのNPOも、寄付された髪を使って油の回収用マットを作っています。

※「ケラチン」は髪や爪をつくっているたんぱく質です。

まとめ

髪の毛はおよそ10万本、1日に0.3mmほど伸びる一方で、頭皮の外に出た部分はすでに死んだ細胞です。

だからこそ切っても痛くなく、傷んでも自然には戻りません。

ストレスで色素幹細胞が使い果たされるという研究も、月に約1cmという速さを利用した毛髪検査も、この性質があってこそ成り立っています。

そして毛綱や粉かつら、ヘアジュエリーの話が示すように、髪は昔から体の一部以上の意味を持たされてきました。

生きた細胞がつくり、切り離しても残る記録。

今日抜けた1本を捨てる前に、少しだけ見直したくなりませんか。

更新日:2026年8月27日(木) 09:45

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